ピロートーク

やがて性愛

恋と呼ぶなら恋かもしれない

「ワンニャンの暮らしが第一党」という政党を作って、党首を犬山猫男氏にして、それの議員秘書になったところからわたしも都知事選に出たい。だからそれまで小池百合子さんには頑張っていて欲しい。もし小池さんがなんらかの不祥事やらで都知事を辞めることになったら、また選挙が行われるじゃない。そのときまでにわたしの所属する「ワンニャンの暮らしが第一党」が政界で力を持てている自信は今のところ無いからだ。


ワンニャンの暮らしが第一党のマニフェストは「ワンニャンの暮らしを守る。人間は自分でがんばれ」である。

医療や教育や税金や高齢者へのサービスやそういった問題は別の政党がそれぞれ高い目標を持って頑張って宇動いてくれるだろうから、ワンニャンの暮らしを守りたいという気持ちを掲げる政党が日本にひとつぐらいあっても良いんじゃないだろうか。
犬山猫男氏、どこかからひょいと現れてくれないだろうか。ペディグリー・チャム、ちゅ~る、モンプチ、愛犬元気。


てなわけでわたしは犬やら猫やらといった生き物を人間より深く愛している。

それは「人間と違ってワンニャン達は嘘をつかないから大好き」という厭世的なワンニャンラヴァーでは無く、「おまえたちはめちゃめちゃにかわいいねえええ」という積極的ワンニャンラヴァーである。
わたしはそれを他人に対してもオープンに出していくので、あつこラヴァーの人はそれを知っており、一緒にお散歩しる時なんかは「ほら、あっちゃん、そこにワンちゃんがお散歩しておるよ」と指さして教えてくれる。わたしはめっちゃ喜ぶ。


わたしはどの恋人たちよりもワンニャンの方がかわいいから好きなんだけれど、わたし自身がそう思われるのは嫌だ。一番好き、じゃないなら、いらない。
ついこの間も、わたしは不安やさみしいが募って「じゃあワンニャンとあつこ、どっちが好きなの」と問い詰めた。相手は「そんな、どっちも好きだよ」と困っていた。

「可愛いワンちゃんと三日お風呂入っていないうす汚れたあつこなら、可愛いワンちゃんをとるんでしょ」「可愛いニャンちゃんと、ケンカ中のあつこだったら、ニャンちゃんの方が好きなんでしょ」「あつこへの好きは、ワンニャン以下?」
我ながらむちゃくちゃな質問ばかりしているので、相手は困る。困る。とても困る。答えにつまっている様子を見計らって「わたしがあなたなら、どんなワンニャンよりも君が好きだよ、って言うのにな。やっぱりあつこへの愛なんてその程度なのね」とふてくされてみせる。
相手は、困る。困る。とても困る。わたしは変に意地悪なので、わたしを好きと言う理由で困っている姿を見るのも、ワンニャン同様に大好きなのだ。これが楽しくて仕方がない。

 

 

この手の質問がわたしは大好きで、しょっちゅうしたがるのだけれど、この手の質問は相手を困らせてしまう。これが原因で愛想をつかされてしまったら、わたしはいよいよワンニャン党(略称)を立ち上げるしか無くなってしまう。

あっちゃんは、なんでいつもそんな質問ばかりして俺を困らせるかなあ、とため息をつかれたのでわたしは「愛情の確かめ方を他に知らないから」と答えた。たぶん、大正解。

 

<世界という庭にときどき咲く花を恋と呼ぶなら恋かもしれない>佐藤りえ