ピロートーク

やがて性愛

はじめからあとがきを読むような恋

「それでも女っていうのはバンドマンに抱かれる生き物なんスよ」という一文を読んで衝撃を受けた。

 


バンドマンに!?
抱かれる!!!????

 

 

 

かつてはサブカルとくくられていたわたしだけれど、バンドマンに深く深く思いを寄せることはなかった。
追っかけをしたり、本気でグッズを収集したりするようなことはしていないし、なんかオリジナルの呼び名など設けたことはなかった。

たとえばわたしの場合、スピッツの草野正宗さんなんかずっと好きだけれど、草野さん、正宗さん、草野正宗、とは呼んでも、くしゃのしゃん♡とかマァくん♡とか呼んだことは一度もない。
盲点。完全に盲点。

 

うーん甘かったなあと大人になって今さら反省している。
バンドマン、追っかければよかった。
ライブハウスで出待ちしたりプレゼントや連絡先渡したり、打ち上げに参加させてもらったりそのあと雪崩れこむようにヤっちゃったり。

ヤリ逃げとかそういうのは本当に嫌だけれど、大人になって思い出したときマジで泣ける思い出になるんだろうなあと思うと、羨ましくすらある。わたしはその手の恋愛の経験は、本当に、ゼロだ。ありがたいことに。


ステージの上で歌う・楽器を演奏する彼を見つめる。
その彼が二人きりのときではまた別の顔を見せてくれる。
わたしのためだけに歌ってくれたりギターを弾いてくれたりして、彼が売れる日を二人で夢見たり、夜中抱き合ったり、ライブに向かう彼を見送って、スポットライトを浴びる彼をまた見つめてみたり。
素敵じゃないか。
夢のある暮らし、はかないけれど確かな思い出に成りうる二人。
素敵じゃないか。


素敵じゃないかといえばほらあの曲

Maybe if we think and wish and hope and pray it might come true
Baby then there wouldn't be a single thing
we couldn't do
We could be married
And then we'd be happy

Wouldn't it be nice


ハッピー気分満載のあの曲も、今は悲しく見える。
素敵じゃないか、素敵じゃないか…。


こんな日々がずっと続くわけではないと分かってはいても夢を見てしまうこと、
自分はこの人と添い遂げることは叶わないと分かってはいても好きでいつづけてしまうこと、
そういうのはよく分かる気がする。

数年前、大学のサークルの新歓で新入生の男の子に「好きな女の子のタイプとか、ないの?」と飲んでいるテンションで聴いたら「家庭的な人ですかね」と18才とは思えない返事をされた。
そのときも今も、つまんないやつめ、と思っているけれど、ああいう彼からすると、「素敵じゃないか」はリアルな生活に直結するのだと思うと少しうらやましい。

 

恋の延長戦に、結婚や家庭が結びつくものが一番自然でむだがなくて理想的だとは思うけれど、それだけが全てじゃないということもよく分かる気がする。それに結びつかなさそうだからと、切り捨てたり、否定するのは、逆に悲しい。
結婚や家庭に結びつかない恋や愛にも、名前をつけて大切に保存したり、良い思い出にしてあげたいと思うし、大切なものって一つじゃないと思いたい。そういうのも素敵なものだと認めてあげるべきなんじゃないの。Wouldn't it be nice…Wouldn't it be nice…Wouldn't it be nice….
どんな恋であれ愛であれ、人を思ったことそのものは、素敵じゃないか。そう思えないと、いくらなんでも、ということが人には多すぎる。

 

「で、バンドマンに抱かれたいの?」と聞かれたら「いやあそういうわけではなくてさあ、うーん…」と曖昧な言葉で返すしかできないけれど、そう思うのでした。


あ、前述したセリフはここからの引用です。
サブカル(女子)必見。書籍化されたもの買いました。みんなも買ってね。なんちゃって。http://togech.jp/2013/04/16/1093
http://togech.jp/2013/05/07/1393

<はじめからあとがきを読むような恋 図書館に寄るからもう帰る>田丸まひる