ピロートーク

やがて性愛

白い手紙がとどいて

花が届いた。


最近の小さな体調不良や心のとげとげが、花を見ているだけでまあるくおさまっていくような気持ちになる。
前回届いたときも、今みたいにちょっと不調が続いていたときだったなあと思いながら、花びらをいらってみる。

いいタイミングだなあ、と思う。
それと同時に送り主のことも考える。
そうだタイミングが良い。


ずっと前に、恋がはじまるには三つのingが必要だと教わった。
feeling,happning,timing.
なるほどなあーと思い、教わってから数年経った今でも思い出してしまう。

わたし、ずっとこの「timing」って、出会うときのことだと思っていたけれど、それだけとは限らなかったんだなあという気持ちになった。
たとえば「私たち(或いは僕たち)出会うのが早すぎたのね」とか「あと10年早く出会っていたら君を(或いはあなたを)選んだよ」とか
これまではそういうドラマ性のあるものを思い浮かべていた。

 

でも今はっきりと思う/分かるのは、本当にタイミングが必要なのは、出会うときよりもその後だよなあということ。


ネットにはたくさん恋愛指南のサイトがあって、それらは付き合う前or付き合ってからで内容が分かれている。
付き合う前のときは、ナンパのコツだったり合コンで連絡先をゲットする方法だったり初デートの行先やいつ告白するべきか等
「タイミング」がいかに恋愛において重要かを説いているのに、
付き合ってからだと「デートのまんねり化を防ぐには」「クリスマスには何を贈ればいいのか」「長く付き合うために心掛けるべきこと」みたいな、happningへの対処法ばっかりな気がする。
timingについて書かれていることといえば、「プロポーズはいつするべき?」みたいな。

プロポーズはさすがにずるいから置いておいて、なんでカップルになってしまえばtimingは気にしなくてもいいあとは個人の裁量で!となるのだろう。今後のことこそ、大切だと思うのに。
たとえば、ケンカして謝るタイミング、「○○さん」と呼んでいたのを呼び捨てにするタイミング、昔の恋愛の話を聞く/するタイミング…。


どれもちょっと間違えてしまえば今後の付き合い方に少なからずや影響が出てくることだと思う。

 


教えてよ、みんなみんな恋愛が得意なんでしょう。
だからそうやってコラムとか指南書なんて書けるんでしょう。
わたしなんか失敗しないよう気にしてばかりいたから、そんなの全然だよ。
書けたとしてもエッセイを模した日記や空想をベースにした夢物語ぐらいだよ。

 


飾られた花を見る。送り主のことを思う。
この人を幸せにしてあげたい、と、けしからん思いに至る。

誰かが誰かを幸せにするなんて不遜な考えはいかんよね、けしからん。不遜だ。偉そうだ。
人は自分でしか自分を幸せになんてしてあげられないんだ。
普段はそう思っているけれども、こうも鮮やかで色とりどりの花を見ていると、
そういうのもいいかもなあ、という何とも言えない幸福感に満たされるのだった。


ありがとう、ありがとう。
プリザーブドフラワーでもドライフラワーでもない、生花を贈るところなんか、とても素敵よ。
いいことばかりじゃないけれど、まだまだ明日も頑張ろうと思えるのでした。まる。


白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう  齋藤史