ピロートーク

やがて性愛

この田舎でも役立たず

緊急事態が出されていた折、わたしは結構明るく楽しく暮らしていた。部屋に花を飾り、本を読み、テイクアウトのおいしいご飯を食べ、『仁』(医療ドラマ)と『バックトゥザフューチャー2』のテレビ放送を見た。仁先生もドクも、現代から離れた時代にタイムスリップしてしまうものの、元から持っていたスキルをフル活用してその時代で一生懸命生きている。仁先生は医者として、ドクは鍛冶屋として。

 

わたしがタイムスリップして、江戸時代や開拓時代のアメリカに飛ばされたら、どうやって日銭を稼ごう、わたしにできること何かしら、と考えると一気に暗い気持ちになってきた。何もできない…。

 

教師を生業としている知人に「〇〇ちゃんは良いよね 江戸時代にタイムスリップしても寺子屋の先生として暮らせるもんね 手に職があるって素晴らしいね」と泣き言をぼやくと「あっちゃんなら何でもできるよ、江戸時代でも大丈夫だよ」と優しい言葉をかけてもらえた。

お茶屋さんかお団子屋さんで下働きでもさせてもらえたらいいんだけれどな…立札の人相書きとかならできる気がするんだけれど…わたしって役立たずだな…。

 

暗い気持ちになり、せめてタイムスリップ時にめちゃくちゃ役に立つ(あるいは儲けらえる)道具を持参することで、チートを発生させて生きていくしか思いつかない。十徳ナイフとかミシンとか。

 

それはさておき、先日スパに行き人生初のアカスリをした。
全裸の心もとない恰好のまま身体中を磨かれていく。体のアカを出し切ったあとは、ふわふわの泡で優しく洗われ、ジェルをつけて体のマッサージをしてもらい、頭皮のツボまで押してもらった。
とても気持良くて癒されながら、『テルマエ・ロマエ』の大浴場内にも、マッサージ師みたいな人がいたよなあと思った。
わたしの身体中のアカをこすってくれているこのお姉さんはローマ時代にタイムスリップしても安泰なんだろう。うらやましい。

 

役に立ちたい、人から褒められたり感謝されたり喜んでもらいたい。そう思う自分もいるけれど、役になんか立たなくても良い。人は居ることそのものに意味がある、と思う自分もいる。
役立たずのつるつるのスベスベ・マイ・ボディが愛おしい。自分のことを抱きしめられないのがもどかしいくらいよ。

またアカスリに行こう。お肌のターンオーバーは28日だってお姉さんが言っていたから来月あたりかね。


<わたしならこの田舎でも役立たず曇ったままのカーブミラーも>嶋田さくらこ