ピロートーク

やがて性愛

火のない夜もひかりはあふれ

生理のだるさが今月も律儀にやってきてじわじわと体に泥みたいな重さをべったりと塗りつけていった。体がその重たさに耐えきれずに横たえる。水を飲む。少し眠って、お腹がすいたから冷蔵庫前までのそのそ行きパンとチーズを食べる。また眠る。体をひきずるように移動して、私の休日は半径数メートルで終わった。

手負いの獣とはこんなものだろうと思う。

わたしの場合たまたま雨風をしのげる場所と、やさしい布団と羽ありの夜用ナプキンがあっただけで、これが野生のジャングルだったら真っ先に狙われていただろう。人間でよかった人間でよかったと思いながらまた眠る。

調子がいいときはテレビを見て、本も読める。SNSもチェックできる。もっと調子がいいときは洗濯も料理もできるし出かけることもお酒も飲める。でも今日はだめだ。ぼろぼろの内臓をもった獣は一日中同じパジャマで眠ったり祈ったりぼうっと楽しいことを考えて過ごす。

そのうち寝すぎて眠れなくなる。そんなときは前に漫画で読んだ「眠れないときのコツ」を試してみる。寝やすそうな場所を出来るだけ具体的にイメージして、イメージの中で寝てみるそうだ。布団の上は今日一日中居たので飽きてしまった。やわらかそうな動物のお腹の中で、子猫や子犬がおちちをもらうような寝方がいいなと思った。そのときはニャンも横に居てほしい。大きなどうぶつの中に、わたしとニャン。みんなで丸くなって寝たら気持ちいいだろう。手負いの獣は、優しい獣によって癒されるのだ。ううう、わたしこういうのに弱いんだよな、と思い涙が出てくる。これも全部生理の情緒不安定のせいということにして、安らかに、眠れ。

 

<ああ水がこわいくらいに澄みわたる火のない夜もひかりはあふれ>井上法子


(ニャン子もいるけどあの子は騒がしいから今回はよしておく ごめん)