ピロートーク

やがて性愛

鼻歌のさびでつまずく

先日、激しく派手ににすっ転んだ。バスが行ってしまいそうだったので、追いかけようと走った際に左足をぐねってそのままスライディングしたのだ。
その結果、左足ねんざ、右すね擦り傷と打ち身、両手擦り傷、スマホケース半壊、靴とストッキング全壊、更にバス逃すという大損傷を負った。その日は昼間に大事な打ち合わせがあったため久しぶりにOLらしい服装をしていた。久しぶりにはいたストッキングにわたしの脚は守られたのだと思う。
ボロボロの状態で出社して、先輩方に「なんていうか…かわいそうに」と言われた。

左足が痛くてうまく歩けない。夕方に久しぶりに会った友人にそう言った。「お医者さんには行った?マキロンは?」と立て続けに聞かれ「病院はきらい しみるのもいやだ」と言ったら、おおまじめに病院に行くこときちんと治療することの大切さをわたしに語った。

 

その人とはその後、旅行のお土産を交換しあって、お茶をして、帰路へ向かった。この人と会う時別れる時はいつももう二度と会えないような気がしてしまうため「また会える?」と聞く。「会えるよ」「次はステーキハウスに行こう」だって。
友人は新宿にある某ステーキハウスが大のお気に入りで、ポイントカードを作ってこつこつためているらしい。

わたしたちは帰る方向が別だけれど、名残惜しくて、相手の使う駅まで送っていくことにした。

「足捻挫してるのに悪いよ」と遠慮されたけど「じゃあそこの坂のところまで」「そこの横断歩道まで」とずるずると駅まで着いていった。


駅入り口の横には、おしゃれなカフェレストランがある。お客さんはいなく、既に閉店してるらしい。小学校の掃除の時間のように椅子が机のうえに上げられていた。横を通った時に店内からハイロウズの『日曜日よりの使者』が聞こえてきた。
わたしはこの曲がすごく好きでとても大切だから、嬉しかった。歌うのを我慢した。相手がこの曲を知らなかったら良くないから。心の中で口ずさむ。

 

このままどこか遠く連れてってくれないか
君は 君こそは 日曜日よりの使者

 

そういえば北海道出張の話はどうなったのか聞くと、まだ未定らしい。行くときは六花亭のバターサンドか苺のチョコレートを買ってきてねと念を押す。あっちゃんの予定も聞かれたから来月に島へ旅行する話をした。楽しそうで何より、と言われた。楽しいよ。
改札から手をふってバイバイ。帰る時にさっきのカフェレストランの横をまた通った。もう曲は変わっていて、ウルフルズの『笑えれば』になっていた。リアルな選曲だなと思った。わたしの予想だと、おそらく次の曲はエレカシだと思う。

 

<鼻歌のさびでつまずく小春かな>黛まどか