ピロートーク

やがて性愛

でも あれはつばさだったよ

ミサイルだか人工衛星だかが打ち上げられた朝、都内の地下鉄は止まっちゃったりして大騒ぎだったようだ。わたしは影響を受けずに済んだけれど、日本に向けてミサイル(あるいは人工衛星)が放たれて、それが首都圏の交通網に打撃を与えるなんて、規模がでっかい話でわたしはなんだか怪獣映画の一人物になったような気持ちがした。


「低予算で少ない人材で何度もミサイルを打ち上げているなんて、『下町ロケット』みたいじゃない?わたし、なんだか最近応援しちゃうのよね」と、言ったら「そんなことよそで言ったら絶対に炎上するよ」とたしなめられた。
炎上は怖いからあまり大きな声では言わないようにする。

 

「でもミサイルが来たらどうしたらいいの?避難方法、地震や火事や津波とは別物でしょう」
「ミサイルじゃないよ、あくまでも人工衛星
「ねえ、どうしたらいいの?」
「地下鉄とかに行くとか」
「地下鉄だって危ないじゃん。シン・ゴジラ見たでしょ」
「うーーーん」
「政府が出してくれたらいいのにね、ミサイル対処法って本て配布してくれないかしら」
「うーーーん」

 

炎上すれすれのトークを交わしたあと、我々は寝床を探して繁華街に出た。
部屋に入って楽しく過ごし、シャワーを浴びて、眠りについた。起きて、また一回して、シャワーをまた浴びて、バスローブで出てきたら、その人はスマホをいじっていた。
「何かニュースあった?」と聞くと「総理が某国に訪問したらしいよ」とのこと。
特定の数か国を、某国と言い換えるだけできな臭い雰囲気が出て面白い。「ミサイルは?撃ち込まれてない?」と「来てないねえ、幸運なことに人工衛星すら落ちてこない」と。なんだ、つまんない。わたしたちが寝てる間に、日本、終わってたらチョーおもしろいのにね、と置きっぱなしにしていたペットボトルのミネラルウォーターをがぶがぶ飲む。この国でも世界でも、終わるのだとしたらどんな終わり方がいいだろうか。自由に選べるのだとしたら、世界の終わり方コーディネーターを招集して、素晴らしい終わり方をデザインしてもらいたい。

わたしが終わり方を選べるのだとしたら、わたしはラブホテルという場所がたまらなく大好きで、終末にこんなうってつけの場所はないと信じてる。だから、こんなふうに、朝だか夜だか分からない時間に、だるくて重い体を横たえながら、あること無いこと話しているときにふぁーーーーーーーーーんっと終わって欲しい。一番に好きな人と迎えるのは切なくなっちゃうから、3・4番目くらいに好きな人と一緒にいながら。
(一番の人は その頃 微熱が下がらないまま 自室で療養中がいい あなたが熱だとわたしはつまらないしとても自由)

おやすみなさい。

 

 

<でも あれはつばさだったよ まわされた腕にこたえたときの戦慄>田丸まひる