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ピロートーク

やがて性愛

約束の果たされぬ故につながれる

おまえの言うことはあてにならんと親戚中から注意を受けた。
知らない知ったしこっちゃ無い。そもそも、わたしは“あてになる奴”なんかになるのはまっぴら御免なのだから、親戚の皆さまには申し訳無いのだけれど、この手の注意叱責はちっとも効果が無い。
でもまさかこの年齢になって、親戚中から注意を受けるなんて、とへこみつつも、この年齢になっちゃったもんはしょうがないじゃん、ねえ、といつもわたしの味方をしてくれる人にぼやいた。

 

「あれ、ごめんあっちゃんていくつなんだっけ」
「数え年なら26で申年。てんびん座のO型は現実的なロマンチストで公平と調和を愛するの。生まれた年に毛利さんが宇宙へ行って、バルセロナでオリンピックがあったよ」
「分かりやすかった。ありがとう」

 

それだけ聞いて、若いねとも意外と年いってるんだねとも言わないこの人のことはかなり好きだなと思った。
わたしもわたしでこの人の確かな年齢を答えられる自信が無い。干支ならハッキリ答えられるのは、前に年賀状の話で盛り上がったから。誕生日にはお祝いするけれどローソクは適当に数本買ってなんとかなってきたし、多分今後もなんとかなる。

あてのならない人、というのが他人においてもわたしは好きなのだ。
街中を一緒に歩いていて、相手がいきなり倒れた時に、救急車の後は誰に連絡したら良いのか分からないような曖昧さ。
倒れた君の横で「ごめん、財布の中見させて頂きます」と片手で謝り、免許証や色々なカードを見てようやく住所の詳細や、ライフスタイルが分かるような、何も知り合ってない関係性。
知りたくないんじゃないけれど、それは今である必要は無いから、いつか気が向いたとき必要に迫られた時に話せばいい気がしている。


ちなみに、わたしは2016年のリオのパラリンピックの徒競走選手の義足にもの凄い感動をしたため、義足をつけることになったら、あのシルバーの超おしゃれな靴べらみたいな脚にしたいと考えている。だから、さっきの人に伝えた。

「もし二人でいる時に、わたしが事故に遭ったら、きっと一緒に救急車に乗るでしょう。でも、あなたはわたしの親の連絡先とか知らないから、とりあえず怪我人の身内としてお医者さんと話すじゃない。」
「その時にお医者さんに『あつこさんの命のために脚を切ってもいいですか』とか聞かれたら、悩むだろうけれど、二つ返事でOKしていいからね。でも、代わりにつける義足はあのシルバーのにしてくれ、って頼んでおいて欲しいの」

「分かった。任せろ」
快諾してくれたあてにならないこの人へ、ありったけの幸福を祈る。この気持ちは、あてにしてくれて構わない。

 

<約束の果たされぬ故につながれる君との距離をいつくしみをり>辻敦子