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ピロートーク

やがて性愛

書架でわたしは迷わない

横溝正史の金田一耕助シリーズが大好きなんです。

高校生の頃にはまったのですが、地元の本屋さんやブックオフではメジャーどころしか売られていなくて。
「犬神家の一族」「八つ墓村」「獄門島」「本陣殺人事件」「悪魔が来りて笛を吹く」「悪魔の手毬唄」どうしてもそこらへんばかりになってしまう。今なら、都内の有名な古本屋街に行ったり、ネットで買ったり出来るけれど、当時は高校生だったし。本屋や古本屋でにネチネチと探すぐらいしか出来なかった。


でもある日、わたしの高校の図書室はなぜか金田一耕助シリーズが充実していることに気づいて。「白と黒」「仮面舞踏会」「夜歩く」「悪霊島」あたりも置かれていて、大体そろっていたんです。何故だか分からないけれど、本当に充実していた。
それで、いざ借りようと本についている貸出カードを確認すると、真っ白だったんですよね。
ていうことは、今借りようとしている「わたし」以外、この高校では誰もこの本を借りていないということ。横溝正史の小説は、図書館に来てパラパラと読んで立ち去るなんてことは不可能だから、イコール誰にも読まれていない新品の本。

 


ジブリ映画の「耳をすませば」って分かりますか?あれ、いいですよね。少女が図書館で借りた本のカードを見ると、いつも自分の前に同じ男子の名前があるんですよ。名前は「天沢聖司」。良い名前ですよね。詩的。
少女は、だんだんと見たことも無い「天沢聖司」が気になってくる。その後に実際にその男子と出会って、最初は反発するも仲良くなって、好意を寄せあうようになるんですよね。まあ、読書好きの少女にとってあれほどドリームなお話はありません。


もちろん当時のわたしも「よっしゃ!!やったるでえ!!!」と、横溝正史相手に誰かの天沢聖司になろうとやる気が湧いてきたんです。しかしね、半分も読んだところで気づいたんですが、わたしが通っていたの女子校なんですよね。どう考えたって運命の人に出会える訳がない。それに、わたしなら、横溝正史の小説ばかり読んでいる女子と運命的な出会いなんて絶対にしたくない。
でも気づいたときにはもう遅くって、貸出カードの名前は既に自分で埋まっているし、だいたい読み終えちゃったし。もうここまで読み終えたら、出会いとか関係無しに「読みたい」「読破するぞ」の方が強くなって来てた自分に救われたりしました。


何が言いたいかというと、わたしは探偵になりたいんです。
それでいて、難解で複雑な殺人事件なんかを華麗に解決したいんです。でも現時点ではそうはいかなくって、ニュースで複雑な殺人事件を見るたびに「ああああの場に居合わせられたら」、解決するたびに「先越された!」とハンカチを噛みしめているのです。てなわけで、難事件が起きましたら解決するのでぜひご連絡ください、ということです。


ついでに、金田一耕助シリーズなら「夜歩く」がマイベスト。鳥肌立ちました。おすすめです。

以上。

<夕暮れの書架でわたしは迷わない ひとさしゆびで本を引きぬく>中家菜津子