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ピロートーク

やがて性愛

稚なきわれの論理さへ

日常

父親が出張から帰ってきたと思えば機嫌が悪いらしい。仕事から帰ってきたわたしに母はそう耳打ちした。

「話しかけても無視するし、むすっとしているから空気が悪くなるし、そのくせリビングにずっといるのよ、嫌になっちゃう」とぶつくさ言う母に
「母さんや、人の心を動かすのは美しい言葉と優しい心。すなわち真の心、まごころ。愛を以て接すれば必ずや父さんにもその心が伝わり機嫌も良くなること間違い無しじゃよ。何もかも根本は、愛なのですよ…」
自分の右掌を母に向け、左手は自分の胸にあて、アルカイックスマイルを浮かべつつアドバイスをした。御仏の心。神の御導き。どちらにも通じるものはすなわち「愛」こそ全てということ。All you need is Love.

 

すると
「あんたは正しいことばっかり言って理屈っぽい。じゃあそのまごころとやらでお父さんの心でも癒やしてきなさいよ」と言われた。

「正しいことばかり言う」「理屈っぽい」はしょっちゅう言われる。母親だけでなく友人や歴代ボーイフレンドにも。傷つくんだよな、これが。
何が悪いんじゃい。間違ったこと言えと??こんちくしょう。
「人には親切に」「家族や友人を大切に」「自分の身は自分で守る」みたいな小学校のクラス目標みたいなことぐらい守ろうって思うじゃないの。それの何が悪いのか理屈で説き伏せなさいよ。

「一度きりの人生だ!どーんと好きなことやってみい!!」と、他人を応援したり背中を押すような強さを持ち合わせておらず、自分自身の人生でも失敗をしないよう出来るだけ堅実に確実に…という性質のわたくし。他人から見たら、“つまらない人生”と一蹴されるだろうと思う。要するに意地が無いんだよね。だから、せめて正しいことを言おうとする。そして、言葉や行動に納得したり理解したいので、言葉を尽くす。そうでもしないと、ちゃぶ台をひっくり返しかねない。「説得してくれ!」「言ってることが分からんのじゃ!!!」「貴様の言う“正さ”を俺に分けろ!!!」と怒る。


黙っていてもわかりあえる、なんてそんなのは傲慢だ。だから、たくさん話し合おう。わかり合えるよう努力をしよう。だから連絡ちょうだいよ、おしゃべりしよう。(私信)

 

ちなみに。機嫌悪い父には関わる自信がなかったので、わたしは「機嫌が悪いなんて気づいていない」フリをしながら父の過ごすリビングでPCをいじったり食事をとり、同じスペースで過ごした。もちろん、それで父の機嫌が良くなりなんかはしない。でも、うちのニャンがにゃあにゃあ鳴いて「扉開けてよ」と父に言ったとき、父は扉を開けてあげる優しさを残していたので、なんとなく、多分大丈夫。

 

<問ひつめて稚なきわれの論理さへかはさぬきみが少しく悔しく>今野寿美