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ピロートーク

やがて性愛

ハイソフトキャラメル買って

愛だの恋だの 日常

わたしはキャラメルというとハイソフトが一番思入れが深い。ちびっ子の頃からやれ遠足だ旅行だとずいぶんお世話になってきた。
情けないやら恥ずかしいやらで、わたしはちっとも味覚が繊細でないので(美味しい、チョーおいしい!、好きじゃない、もう食べたくない、ぐらいしか種類がない)個々のキャラメルの味に違いを見いだせる自信は無い。でも、ハイソフトがキャラメルの中では一番好き。やわらかくて、なんだか甘みもまろやかな感じがする。色も少し濃いめなので、ああ砂糖を煮詰めて出来てるんだと思い知らせてくれる。チョー美味しい。

ただわたしは歯があまり強くなく、歯並びも少し変なところがあるので、気を抜くと虫歯や歯肉炎になりやすい。この前、会社の先輩からもらったキャラメルを食べていたら差し歯がとれたので、今度歯医者さんにしぶしぶ行くことになっているぐらい。でもあのとき食べていたキャラメルはハイソフトじゃないからハイソフトは悪くない。


そんな今日、昼間に画像が送られてきた。彼からだった。
「これめっちゃ美味しい」
何か綺麗なパッケージのお菓子を持った彼の手。
「これなあに?」と聞くと新発売のキャラメルだそうだ。
またキャラメルか、と思ったけれど、彼のことは好きなのでたった今現在わたしの歯事情は話さなかった。だってかっこ悪い。口閉じてれば見えんし。

わたしはキャラメルではハイソフトが一番好き、と彼にメッセージを送った。ハイソフト、良いよね。おれも好き、パッケージもおしゃれだしやわらかいし。
知性を見せつけ合うようなやりとりをせずに、あくまでもやわらかく優しく会話を進められるから、彼のことが好きだ。やわらかさとは優しさはよく似ている。


「このキャラメル、ローソンで売ってたよ。ぜひ買ってみて。おれ、もう食べ終えちゃった」
「食べ終わるの早いね、きゃらめる君になっちゃうよ」
「それだけおいしいってこと。おすすめ」
「そんなにいっぺんに食べて、虫歯にならない?」
「きちんと磨けば大丈夫だよ」


このきゃらめる君め、虫歯になっちゃえ、と思った。
やわらかさとは優しさ。優しさとは甘さ。甘さは虫歯につながる。虫歯は痛い。優しさで、あなたも痛め。苦しめ。わたしだって差し歯抜けちゃったんだから。
わたしは好きな人の幸せを願う。でもそれと同時に、同じくらいの強さで、好きな人の不幸も願う。わたしの帰り道にローソンは無いので、スーパーに寄った。どうせ歯抜けだしどうせ虫歯になるんだから、とハイソフトを買った。ハイソフトは、やっぱりやわらかくって甘くて美味しい。ねえ、不幸を祈ってしまって、ごめん。でも、本音です。


<一時間たっても来ない ハイソフトキャラメル買ってあと五分待つ>俵万智