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ピロートーク

やがて性愛

何故僕があなたばっかり好きなのか

悩むこともある 愛だの恋だの

人生で2つしか時計を身につけたことがない。
ひとつめが、大学受験のとき。
高校の先生が、受験会場や模試の教室によっては時計が無いところもあるから自分の時計を持って行くように、と言っていたことを母に伝えたら安い時計を買ってきてくれた。赤いベルトのアナログ時計で、わたしが受験生で無くなった途端に壊れて、天寿を全うした。たぶん。
ふたつめが、就活生のとき。
キャリアセンターの先生が、時間を守るのは社会人の基本で、面接の会場とかで携帯で時間をチェックするのはマナー違反だから、シンプルな時計を身につけなさい、と言ってきた。それを祖父母に伝えて、ピンクゴールドのきらきらしたお洒落時計を誕生日に贈ってもらった。シンプルがどうのとかは完全に無視した。かわいいのが欲しかった。

 

そして社会人になったからといって、時計を身につけはしなかった。
だって内勤だし、社内に時計あってPCもスマホも普通に見て確認できるし。キーボード打つ際に地味に邪魔で、つけて会社に行っても、作業をする前に外して鞄にしまっちゃうのが関の山。


が、今回はじめて時計が欲しいなあ、と自分の意志が動いた。

ミッキーマウス・ウォッチ。
調べてみたところ、5000~1万円前後で買えるみたいで、「食指が動く」とはこのことかと感じた。
別に、Disneyファンってわけじゃないんだけれど、わたしの左手首にミッキーマウスが、両腕を動かしながら笑顔で時刻を指したら、なんだか毎日が楽しくなる、気がする。


ネットで調べた中だったら、これがいいな。

黒いモデルの、皮っぽいベルトのやつがとくに可愛い、気がする。

 

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時計ってこだわっている人が多くて、高いやつは本当にきりがなくて、時計道は果てが無いのだろう。でもミッキーマウス・ウォッチは、なんだか時計にこだわっていない人みたいで凄く良い。
壊しちゃう前提で、いつかもっと良いものを買うという前提で、欲しい。

 

そんなことをスクロールするごとく適当に話していたら、次の週に会ったとき、デニーズで、あの人はタブレットを見せながら言った。
「俺、あれから結構本気で調べたんだけれど、ディスカウントサイトとかなら数千円で買えちゃうんだね。それでこれがあっちゃんには似合うと思う。これ」
見せてくれたのは、ベルトが布製で、トリコロールカラーのものだった。ああ、この人は、わたしが居ないところでわたしの手首とミッキーマウスのことを考えていたのか、と思うとなんだか無性にいとしくなって、「こっちおいで」と頭を寄せさせて、なでた。
「いいこだね、本当に、いいこちゃん」
年上の男に対して、何様目線だよなんて言わないでくれ。わたしはわたしだ。何を可愛がろうがどうやって愛そうが、誰かから指示される筋合いなんて、どこにもない。
壊しちゃう前提で、いつかもっと良いものを、良い人を選ぶ前提で、時計を、人を選んで身に着けていく。ミッキーマウス、あなたもあんたも、わたしにとったら同じことなんだから、良い気にならないでよね。気分良くいられるのなんて、今だけなんだから、調子のらないでよ、ね。ふんだ。

 

<何故僕があなたばっかり好きなのか今ならわかる生きたいからだ>早坂類