ピロートーク

やがて性愛

戦争に行ってあげるわ

朝ドラが好きで、嫌いだ。

愛嬌のあるヒロイン、馴染みの良いテーマソング、良質で丁寧に作られたストーリー。毎日15分やそこらで見られるお手軽さというのもお得な感じがする。ああ、素晴らしいよ。最高だよ。日本のエンタメってやつはさ!!!と、こんな風に嫌みったらしく言うほどに憎んでいる。


もちろんわたしにも一定の社会性があるので、話題振られたらそれなりに返す。
「最近は朝早くに出てるから見てないんですよ、なんか今の凄く面白いらしいですね。学生の時はよく見てましたけれど、"ゲゲゲの女房"とか"カーネーション"が面白かったなあ」みたいな感じで。ゲゲゲの女房とカーネーションは確かに見ていたし面白かったから嘘ではない。ただ、その当時のわたしは今ほどに朝ドラを憎んではいなかったけれど、むしろ好きな方だったけれど。それではなぜ憎むようになったかは、ここから先の長い文章とラストの5行ぐらいを読めば分かります。

 

何もこんなに憎んでいるのはNHKや豪華俳優陣のせいにするつもりは一切ない。そんなには。

あれらのもつ現代的な“正しさ”が時々鼻につくのだ。
ごく具体的に言うと「戦争は嫌いです」とか「女子にも学問をする必要があります」的な発言が。そういうの、もういらないんだよ。飽き飽きしているんだよ、わたしは。そりゃあ戦争は嫌だし、男女平等であるべきで、男性だから女性だからと学問や仕事に差をつけることや何かを強要したり諦めさせたりするのはいけないと思うよ。平成の世だもん。今時そう思うに決まってるじゃん。
でも当時の人だって、戦争を嫌がる人や女性と男性の間に差があってはいけないと考えた人はいたと思うし、声をあげた人もきっといたと思うよ。
例えば「あさが来た」でいうと、あの話は実在するモデルが居て、ストーリーに仕立て上げているのでしょう。全部見てないけれど。そういう進歩的な考えを持った人たちが居たから今こういったドラマになって、このような社会になっているということ、わたしもその恩恵を受けた一人だということはよく理解したうえで、分かっている。でも、でもむかつく。

 

ドラマで「戦争最高!ヒューイ!どっかーん!」「嫁は夫に尽くしてなんぼのもんです」と言えとかそういったことを求めているんじゃないよ。ぶっちゃけ朝ドラに限った話じゃないけれど、映画でもドラマ、本でも、なんか女性キャラはそうあらなければいけないみたいなもの、あるよね。
なんかそれこそ個人の思考や感性を無視して、現代のドラマ視聴者の感情に向けてサービスやパフォーマンスとしての「戦争は嫌いです」「女子にも学問をする必要があります」発言に聞こえてしまう。もうその類のこと言われると、あ~そうっすよね~僕も思いますが、そういうの別に求めてないんだよね~~と、謎プロデューサーがいきなり現れて、足を組み替えつつ台本を丸める。視線を役者からそらす。丸めた台本で膝をぽんぽんと叩き、一息ついて言う。

 

「そういうこと言いたいんだったら、別にうちの劇団じゃなくても良くない?」

 

もう本当にこのプロデューサー誰なんだろう。少なくともわたし(あつこ)では無いんだけれど、そんな気持ちにひゅるひゅると落ちていく。記憶は曖昧だけれど「ごちそうさん」ではめい子が、戦争で兵隊さん頑張ってるんだから私たちも我慢しなきゃよね!と言ってた時は凄く好印象だった。いいぞ、もっとやれ。あと、真田丸でお梅と作兵衛が「戦は嫌です、田畑が荒れますから…」と言った時も「そうそう、戦争を嫌がる理由はそうでなくっちゃ!」と高鳴った。個人に過ぎない個人が、大義名分を含んだ大きな話をするとどうもくさくさする。しらけてしまう。

 

念のためにもう一度言うけれどわたしは戦争は嫌だし女子も男子も平等に教育を受けて社会で活躍するべきだと思うよ。でもその理由は、人と人が殺し合うのを見たくないとかそういうのよりも今の生活が崩れることが嫌だったり、それこそ「戦争はいけないものです」という教育を受けてきたからなんだよね。その矛盾は分かりながらも、そういうことを言う人たちに違和感を覚えるんです。
あっでもはだしのゲン大好きなんだよね。でもさああれは何かそういうものじゃない?言ったら言ったできちんと殴られたりしているし、それを根本にして水脈となって話が進んでいるって感じがして好き。キャラクターが「発言している」よね。セリフではない。
にしても、戦争はいくないとか男女平等とか皆毎朝そういう言葉聞きたいのかな?わたしはそうではないけれど。もうそういうセリフはさ、教科書とか学研の漫画の少年少女にでも言わせておこうよ。博士とのぼるくんとひとみちゃんとロボみたいな組み合わせの学習漫画でさ、なんかきっとのぼるくんとひとみちゃんがふとした拍子に太平洋戦争中の日本にタイムスリップしてひと悶着ある系の、そういう学習漫画。


何度でも言うけれど、男女は平等であるべきだと思うよ。
でも過去にそうはいかなかった時代があって、それに異を唱えて頑張った人たちが居たから今の社会になっていて、その過程にドラマがあり、感動を産む。分かる。理解も共感も超する。でもね、ただのわたしのわがままなんだけれど、過去を舞台としたドラマの中で一個人としての女性に大義名分を語られるとどうしても萎えてしまう。男性だったら萎えないのかな?でも個人としての男性が大義名分を語るドラマとかまだ見たこと無いから本当のところは分からない。もしかしたらわたしは根本的なところで差別主義者なのかもしれない。まあそうだったらそれでもいいかもしれない。現代の現実世界においてはきちんと平等を心から望めているんだし。そういった部分は、皆多かれ少なかれあるはずだと信じたい。矛盾みたいなもやもや。だから、そんな事を考えさせてしまう朝ドラには変にやきもきいらいらさせられる。ちくしょう。次にわたしの前で、びっくりポンとか人生は紙ヒコーキとか歌ったり言うやつは痛い目にあわせてやるんだからな。覚えてろよな。だいたい、人生が紙ヒコーキなわけねえじゃん。あってたまるかっつーの。

 

 

 


ここまでの話を、ごく親しい友人Hさんに語ったところ、ドラえもんがのび太を憐れむ時のような目で言った。
「あっちゃんさあ、朝ドラ好きな男にでもふられたんでしょ?」

 

 

まだふられて無いもん!!!!!!!馬鹿!!!!!
ずっとディスプレイ見てるからか目が乾いて、涙が出て来るね。あつこ、負けないよ。

 

<戦争に行ってあげるわ熱い雨やさしくさける君のかわりに>江戸雪