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ピロートーク

やがて性愛

シルクのリボンで縛ってほしい

思い出話 わたしの友だち

智香ちゃんの話をしよう。

わたしの友人の一人に智香ちゃんという子がいる。雰囲気がある、なかなかのべっぴんさんだ。
べっぴんだからなのか順序は分からないけれど、彼女はモデルをしている。お仕事ぶりをときどき拝見しているが、その界隈というのも奥が深いジャンルなようで、わたしにはあまりよく分からない。

新宿のバーに智香ちゃんの写真が飾られていると教えてもらったので、先日待ち合わせてふたりで飲みに行った。お店に入ってみるとキレイな女の人の写真がたくさん飾ってあった。
加工されているのかな?よく分からないけれど、どれも白っぽいヴェールに、女の人たちののびやかな裸体が包まれている。
たくさんの女の人の裸の写真があるから、一瞬怖気づいたけれど、彼女のことはすぐに分かった。


これが智香ちゃんね、と指をさすと、彼女はうなずいた。当たった。

 

智香ちゃんは、いつも黒い服を着ている。襟がきっちりと首元にまでついた、肌を隠すような、ロング丈のスカートやワンピースが多い。彼女と旅行をしたとき、一緒にお風呂にはいったことがあるけれど、わたしの知っている彼女の裸なんてその程度だ。たいして覚えていない。まあ女友達の肉体なんて、そんなもんでしょう?

そんな彼女が、ねえ。とその写真を見た。

 

そういえば
数年前に彼女の裸の夢を見たことがある。
夢の中のわたしはなぜか妊娠していた。誰との子どもなのだろうか。診療室でお医者さんに診てもらうと、妊娠しているから横の洗い場で体の中の卵を出して洗い流し身を清めなさい、と風呂桶と薄っぺらいタオルを渡された。
お医者さんの言われるがままに、曇りガラスのドアを開ける。“洗い場”と呼ばれるところは銭湯にそっくりで、湯煙の中に先客が一人いた。智香ちゃんだった。


智香ちゃんは、お風呂用のいすに座り、体から卵を出して洗っていた。卵は、まんまるでたくさんあった。「やっほ~」と挨拶をし、横に座った。
卵の出し方を聞くと、彼女は体の正面をこちらに向けて見せてくれた。
理科室の人体模型のように、お腹の蓋はパカッと外れるらしく、中からは卵がぽぽぽぽぽと溢れていた。
それについた血を、一つずつお湯で洗い流し、渡された風呂桶に入れるというのがわたし達の課題らしい。


智香ちゃんは誰との子どもの卵なのかと聞きたかったけれど、彼女の真剣な横顔を見ると、そんな質問をするのはなんだか憚られた。
わたしも蛇口からお湯を出して風呂桶に貯める。お腹は意外と簡単に開けることができた。
開いたときに、わたしが思わず「わっ開いた」と口にすると、智香ちゃんは顎を少し上に上げ、目を細め、ふふん、と作った笑いをする。彼女の表情の中で一番かわいいやつを浮かべた。「背中をぽんと押して空気を出すのがコツなのよ」と教えてくれた。
なるほど、と思いながら懸命に洗っていると、彼女は立ち上がり洗い場を去って行った。手に持った風呂桶には彼女が出したであろうまん丸の卵たちが積まれていた。剥かれたライチのようにつるんとした、透明感のあるものだった。智香ちゃん、洗うの上手いなあと思いながら、わたしは自分の出した卵を不器用に洗うところで、夢は覚めた。


あの夢で見た裸と、旅行の時にお風呂で見た裸と、今こうやって飾られてある彼女の裸は同じものなのだろうか。それとも別物なのだろうか。どれが本当でどれが嘘なのか。もしかしたら全部嘘なのだろうか。
横にいる智香ちゃんの本物の肌は、ぶ厚いコートで隠されていて露出を許さない。たぶんこれは本当だろう。本当だから、隠しているのだろうか。それとも本当の物こそ見せていて、本物の肌は偽物だから隠しているのだろうか。わたしにはまだ分からないけれど、写真の中の彼女の肌は、やっぱり綺麗だった。
智香ちゃん、きっとわたしにとっては全部が本物のきみなんだと思うよ。とりあえずまた近いうちに遊ぼう。それで時々はエッチな話でもしよう。いつでも連絡ちょうだいよ。

 

<束縛をするならもっと柔らかいシルクのリボンで縛ってほしい>久保奈緒子

 

せっかくだから彼女のブログをも。凄いわよ。

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