ピロートーク

やがて性愛

性愛は打ち消しがたく

要するに何が言いたいかというと「人のセックスを笑うな」ということだ。


松山ケンイチ主演の映画の話がしたいんじゃない。もちろんその影響を受けての発言ではあるけれど。
あの映画を見たのは確か高校生のときだった。タイトルには衝撃を受けながらも松山ケンイチファンだったのでDVDを借りたのだが、映画の内容はすんなり沁みた。原作の小説も読んだけれど、ストーリーより何よりタイトルが一番いいなと思った。

 

人のセックスを笑うな。

 

英語タイトルは「Don't lough at my romance」これも素晴らしい。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ、という文句を聞いたことがあるけれどそれとは違う。人のロマンスを笑ってはいけない、だ。


芸能人の恋愛スキャンダルニュースを、わたしはとても笑えない。
不倫、二股、隠し子、密会、お泊まり報道etc.
いろんなスキャンダルが月に1度は大きく流れるけれど、それがどんなに無茶苦茶な理屈のニュースだったとしても、なんだかわかるような気がしちゃう。
「そうだよね好きになっちゃったんだもん不倫だと分かってても会いたいよね…」「2人の人を好きになっちゃうことだってあるよね…」「バレたらまずいって分かってても、会わずにはいられない夜もあるよね…」「軽率な行動だとしてもせずにはいられない行動ってあるよね…」全てのカップルに、あるいは色恋に動いてしまったシングルさんに共感せずにはいられない。
高い位置から偉そうなことや批判なんてできない。きっとわたしも同じことをしたかもしれない、そう思わずにはいられないのだ。


人のセックスを笑うのは自分のセックスを、ロマンスを笑うのと同じことだ。
いつだって正しい判断ができる、なんて自信がなぜあなたがたには沸くのでしょうか。わたしにはちっとも沸きません。わたしだって同じ立場だったらきっと路上でキスをした。会いに行ってた。お泊まりしたかった。
恋やら愛やらが人を強くするって言ったやつはどこのどいつだ。出てこい。ツラを貸せ。ぜひ教えを請いたい。
わたしはどこで間違ってしまったのでしょうか。あるいは、これからどこで間違うのでしょうか。

判断を誤るのが、冷静さを失ってしまうのが、自分と相手だけの世界がここだけには存在すると信じてしまいそうになるのが、恋愛の醍醐味ではないでしょうか。
人のセックスを、人のロマンスを、わたしの恋や愛や失ってきた様々なものを、どうか笑わないでください。これはいつかのあなたの姿です。


<性愛は打ち消しがたく花束の水替へにゆく暗き暗室>辰巳泰子