ピロートーク

やがて性愛

そうじゃなければ妻と別れて

奥さんは、どんな人なの?と聞いた。
「どんなって」
ほら、顔とか髪とか背とかからだとか、どんな人
「ふつうだよ」
「ふつうじゃわかんないよ」
口をもごもごとさせてばつの悪そうなその人に、投げかけた。


目は?「小さいかな」
鼻は?「低いね」
肌は?「ふつうかな」
背は?「あっちゃんより少し低い」
髪は?「最近切ってショートになった」
体型は?「ふつう」
胸は?「ふつうだね」

 

「じゃあわたしの方が美人だ」
「そう、あっちゃんの方が美人だ」

 


でも

 

選ばないくせに、という言葉を飲み込んでわたしはそっぽを向いた。
別に男はあなただけじゃないあなただけが好きなんじゃない。
わたしはきれいわたしは綺麗。
あなたから好かれるにふさわしい形と中身を持っている。

 


なんであなたは、と言いかけて、再び言葉を飲み込んだ。これ以上は語ってはいけない。

きれいな女というものは多くをべらべら語るものではない、気がする。
あんまりべらべら口ばかり達者なのはいかんね、男でも女でも。野暮ったい。星回りが悪くなりそう。

 

とはいいつつも、世の中の人について思うことはなぜ、みんな思ってることを言わないのだろうということだ。
(自戒の念をこめてのメッセージ)
100分の1とまではいわなくても、もっと1000分の1ぐらいは好き勝手に思っていることを言っていいと思う。
マナー・優しさがあるから言わないだけとか、そういうことじゃなくて、なぜ何も言わないでいて通じ合える分かり合えると、わたしたちは信じてしまうんだろう。
それこそ真実/究極の愛だと信じて願ってしまうのだろう。

前述した人とは別に、いつもいつも、何か言いたげに探りを入れてくる人がいて、わたしはそれをちらつかせられる度に、むしょうに腹がたつ。
何探りいれてるのよ言いたいことあるなら言いなさいよはっきりと聞けないってことはやましいことがあるからでしょう。
どうせ怒られるんだからどうせわたしから嫌われるんだから、はっきりしなさいよ。そう言ってしまいたくなる。
(もちろん、とてもそんなこと言えないけれど)


そうやって怒っておきながらも、本当は分かっている。言いたいことが言えないなんて理由は一つしかない。相手のことが好きだからだ。
最初の人にも、探りをいれてくる人にも、言いたいことが言えなかったということは、わたしは本当はあなたたちのことが大好きなんだ。
自分で分かってるし認めている。
だけれど言いたいし、言えない。
さらに言うなら、相手の本音を知りたいし、その本音は自分にとって都合のいいことだけじゃないと絶対に嫌だ。
そういう矛盾やわがままと一緒に歩いている。

 


ただ、悲しいほどわかるのは前述した人もあまり多くを語りたがらなかった、ということはわたしと同じ気持ちを抱えているということだ。
飲み込もう・言わずにいようとするも、わたしにつつかれたから言わざるを得なかったあの人が、かわいそうでならないし、いい気味にも思うし、優しくも男らしくも思える。そして悲しくも。

見つめあうだけで心が通じるなんて、あるのだろうか。
心が通じ合うような二人こそが、愛やら恋やらの理想なのだろうか。
もし、もし仮に、そういう相手が現れたのなら、その人こそ運命の人なのだろうか。
だとしたらあなたはどこにいるの、と夢を見ながら布団にくるまる、今日も、おやすみなさい。

<今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて>佐藤真由美