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ピロートーク

やがて性愛

「火よ」とあなたは教えてくれる

古代、神秘、進化、生物。
そういった言葉にロマンを感じる。

恐竜や、ビッグ・バンの話、人類の進化、生き物が生き物に枝分かれしていく過程の話や図を見ていると、時間がたつのを忘れてしまうほど。
これは、満天の星空を見て「自分の存在や悩みがちっぽけに感じられる」という感じになるというよりも、こんな自分にも遠くにふるさとが確かにあるということを感じられて……
とにかくロマンチックに思うのだ。

 

これまで当たり前に自分だと思っていた自分が、揺り動かされる。
いろいろ枝分かれしてここまでこれたこと、枝分かれした際に様々な可能性や生物を捨て去っていったということ。けれども、そのおかげでこうして好きな人たちに出会えたこと。


今、人間としてその中でも女として、おおむね満足して幸せに生きているつもりだけれど、もしあのとき鳥のままだったら。猿のままだったら。いや、それ以前に細胞分裂なんてしないでいたら。
もしかしてもっと幸せな生活を、もっともっと好きになれる人(鳥?猿?細胞?)と出会えていたのかもしれない。

 

 

 

好みのタイプは?と聞かれたら「犬顔」とこれまで答えていたけれど、最近は猿顔の人を見ると、未分化な生き物のように思えてきて、愛おしい。

そうだった、生物。命。わたし達すっかり人間でしかいないつもりでいるけれど、それ以前からずっと命は続いていて、100%猿だった時代もあったんだ。猿顔の人はそう気づかせてくれる。(猿顔の人、本当にごめんね)

 

ましてや煙草なんて吸われたらドキドキ。


「あ、ごめん。煙草吸っていい?」
「もちろん、どうぞ」
この場合のわたしの「どうぞ」は「お気になさらずに。わたしは吸う習慣がございませんけれども周りに喫煙者は多いので慣れています。吸ってくださって構いませんよ」という意味だけではない。

 

どうぞ、火を。

 

我々の祖先の猿たちは木から降りて二足歩行をはじめたこと、火を扱うことで人間へと進化していったとか。

煙草を箱から一本出し口に咥え、左手でライターを持つ。
この人は今人間になろうとしている、進化を遂げている。
こうやって人は人になっていった、
一人の人格を持った人間になっていったのだと思う。

 

煙草吸う人と付き合ったことないけれど、「煙草を吸う」という習慣を持ち始めた過去がある、というだけで喫煙者にときめきを感じる。
何歳から吸い始めたの?なぜ?その種類にした理由とかこだわりとかあるの?
そういうことをいちいち聞きたくなる。
前の日記でも同じようなことを書いたけれど、わたしが知らない過去を持つ人、過程を乗り越えてきた人、自分自身の“習慣”を持っている人が大好きなんだ。

だからできるだけみなさん、進化の姿をわたしに見せてください。すぐ好きになってあげるから。というのもわたし、怖くてマッチとかライター苦手なんです。ですので、わたしの分も宜しくお願い致します。
あ、でももらい煙草ぐらいなら平気なので、できることなら「一本どう?」と言って、ついでに火もつけてくださるととても助かりますです。
一緒に進化の過程を歩ませてください。宜しくお願い申し上げますです。

 

<呼吸する色の不思議を見ていたら「火よ」とあなたは教えてくれる>穂村弘