泡つぶやく声こそかなし
小学生のとき国語の授業で宮澤賢治の『やまなし』をやった。
そして、やまなしに出てくる"くらむぼん"とは何か?を授業で話し合った。
魚、あわ、人、めいめいの考えが出た中で先生が思い出話をしてくれた。
先生が昔みていたクラスに優秀な男の子がいた。そのときもこうしてクラスで"くらむぼん"とは何かを話し合った。
その男の子は言った。
"くらむ"は目が眩むとかのくらむ、"ぼん"は梵字とかのぼん。目が眩むのは光や太陽、二つ合わせて仏様とか神さまのことではないか
わたしたちは宮澤賢治ではないから、くらむぼんの真意は分からない。だけれどわたしは感動した。自分の発想のあわれさを恥ずかしく思った。
今考えると、ただ児童文学名作シリーズを読みふけっていたわたしが、本当の意味で文学に初めて感動した事件だった。
ただ読むだけではなくて考えて読むことで物語はとても奥行きが出るのだと知った。
おかげさまでわたしもこんなに文学部です。
くらむぼんは
かぷかぷ
笑ったよ。
くらむぼんは
殺されたよ。
くらむぼんは
死んでしまったよ。
神も仏もない時代というのは
おそろしいものだと思う。
ああ、やまなしのお酒なら、飲みたいなあ。
〈泡つぶやく声こそかなしいざ逃げんみづうみの碧の見るにたえねば〉宮澤賢治