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ピロートーク

やがて性愛

灼きつくす口づけさへも

キスの話をしよう。


ある程度の年齢を過ぎたからか、20才も迎え終えて、わたしもたぶん一通りのことは経験しました。これからまだ先いろいろあるんだろうけれど、
(そういえば制服ディズニーはしたことないなぁ)
もう中学や高校生のときのような変な意地もなく照れもなく、大きな間違いもなくやっていけそうです。

キスの話をしよう。


キス、くちづけ、接吻、ちゅー、口吸い。
表現はさまざまですが、することはどれも同じ、キス。人はどうやってこの行為を手にいれたのかな、と思う。つながりたいという本能的な欲求の最初が手で、次がくちびるなのかな。うーん。ええやん。


わたしの今の恋人のファーストキスの相手は、申し訳ないながらもわたしなのですが、行為の進化・進歩というものを目の当たりにして、切な驚く。
最初は、『ちゅー』というような感じだったのに、いつの間にか、首に手をかけたり、わたしの頭を押さえつけて自分側に持ってきたり、あごをひょいと持ち上げたり、そんな手際を覚えている。
あなた、そんなのどこで覚えたのよ、そう聞きたくなるほどに。聞けないけれどね。


映画やドラマや漫画を見たり読んで、こんな形があるんだ!って覚えたのかなぁ知ったのかなあ、それとも自然に体がそうさせるものなのかなぁ。いつか彼と別れたら、こんなキスを他の人にもするんだろうなそのときにはもっと上手になってるんだろうな。
そんなことを、キスの間ずうっと考えていた。
どうかわたしの気持ちに気づきませんように。この恋が実ることを願ったり、百年後も一緒に居たいなんて言わないから、彼に未来永劫の幸福が降りかかりますように。
そう祈りながらするとなんだか悲しくて泣きそうになった。
わたし自身もっと盲目的に人を愛せるタイプだといいんだけれど、それはまた別の話。


キスの話をしよう。

映画でのキスシーンは『シド・アンド・ナンシー』が一番好きです。
ゴミ置き場での塵降るなかでのくちづけ。悲しくて、永遠という言葉の似合わなさに泣かされる。美しくなんか、ない。
わたしはこれから少しずつ年をとっていく。
少しずつ老いていって、たぶん今が人生の中で、一番キレイな時期なんだろうということはわかってる。
だけれど、美しいことが必ずしも良いことではないし、ディズニープリンセスのように永遠の恋人や運命の相手と寄り添い遂げることが最上の美ではない。

終わりゆくものを受け止める、そんな悲しい口づけをするたびに大人になるんだとしたらそんな優しい人生はないと思うな。
世界中のあらゆるものにキスの雨が降りますように。祈りを込めて。

 

〈灼きつくす口づけさへも目をあけてうけたる我をかなしみ給へ〉中城ふみ子