男ってこぼれたジャムのようだけど
男の子は、いつ男になるのでしょう。
いや、性的な意味ではなくて、ね(笑)
なんていうか、自らの異性の匂いに気づくっていうのかな。
女の子を女の子扱いする、みたいな。
大学で知り合った仲良しの男子の話になってしまうのですが、
その男子は、野球をずっとやっていて、サッカー観戦が趣味のスポーツ少年なのです。
この前、大学から一番近い郵便局に行くために、ふたりで道を歩いていると、雨が降り出してきました。
わたしは折りたたみ傘を出して、一緒に入ろう、と言いました。
「おー、わりい、ありがと」と彼は言い、躊躇いもなく、俗に言う“相合傘”をしていたのです。
傘に入った彼がしばらくの後に、こう言いました。
「傘、俺が持つよ」
「え、いいの、ありがとう」わたしは傘の柄の部分を彼に渡します。
雨はまだ止む様子もなく、二人でテクテクと歩いている最中に、彼はまた言いました。
「あっちゃん大丈夫?肩ぬれてない?」
「んー、お互い様でしょ、ほどほどだから大丈夫だよ」
そうして何か軽やかな、楽しい談笑をして、郵便局までの道を歩きました。何を話したのかは覚えていないけれど、けれどけれど、
わたしは、「ああ」と思いました。
普段は一緒にバカ騒ぎをする彼が、こういった時に「男」としての役割を果たそうとする姿はなんだか切なくて、たまらなかったのです。
わたしは地元のフツーの公立中学校では、異性とお付き合いなど全くせずに、「男子サイテー!」のような意識のまま、地元の女子高に通っていたからでしょうか。
女子高に3年間通い、卒業をし、共学の大学に進んだ時に、
中3のときにあんなに嫌いだった“男子”たちはみんな優しくスマートになっていたのです。
わたしの見ていない3年間で、男の子たちは、女子の扱いを覚えたのでしょうか。
それともわたしがずっと気づかないでいただけで、男の子たちは最初から優しかったのでしょうか。
そういえば小学校のときに仲良かった男子に久しぶりに会って
他の友達と一緒にお茶した時も、彼がコーヒーを頼んで切なくなったことが去年あったなあ。
会わなかった・話さなかった数年の間に、きみはもう珈琲が飲めるようになったんだね、知らなかったよ。
いつまでも好きな男は
“オトコノコ”。
そんなふうに感じるの。
<男ってこぼれたジャムのようだけどふきんで拭いても終わりじゃないの>中原千絵子