ピロートーク

やがて性愛

スピッツの美しい歌詞10選(①~⑤)

 スピッツが今年で結成30周年というアニバーサリーイヤーを迎え、CDを出したり、ライブをやったりとお祭り騒ぎなこの頃である。中学生の頃からファンになったわたしにとっても、今年はファン歴10年のアニバーサリーイヤー。

 

そんな中こんな愛溢れるブログ?を見つけたので

わたしもスピッツでまねしてみた。

note.mu

 

はい、そんなわけで、個人的美しい歌詞10選~~~~~~。

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2017年上半期読書記録

今シーズンは近くの図書館に通い読書に励もうと思ってましたが、映画を見る機会の方が多かったかもしれません。なので予定よりもあまり量は読めませんでした。
てなわけで良かった作品の記録です。上半期代表は3作。


①うらなり/小林信彦
夏目漱石坊っちゃん」とその後のうらなり視点の物語。ドヒェーと言いながら読んだ。まことの名作じゃコリャ。
坊っちゃん先生が他の教師をやれ赤シャツだの野だいこだのあだなを付けていたように、うらなりも坊っちゃん先生に心の中であだなを付けていた。その名も「五分刈り」。いいあだ名じゃないか。五分刈りなんてまさに坊っちゃんって感じ。あだ名は思い出せるけど本名がどうも思い出せない、とうーんうーん言うところが良い。
坊っちゃん視点だとあの話は快活だけれど、赤シャツからしたら「ああもう余計なことして!」だし、うらなりにしたら「コイツ何やってんだろう」というそれぞれの思いがあって、やっと『坊っちゃん』というストーリーに辻褄があう、って感じがした。個人的には坊っちゃんより面白かった。

 

ハックルベリーフィンの冒険/マークトゥエイン
うらなり読んだ後といったらこれ読むしかないな、と手に取った。長くてめげそうになったけど良かった。
要するに、トムソーヤーの冒険の後日にハックが黒人奴隷のジムと自由を求めて冒険するという話。
人種差別、自由、宗教、とアメリカのテーマっぽいものがてんこ盛りで凄かった。アメリカ文学史上最上の一冊と呼ばれるのも納得。
うらなりにしろ何にしろ、いわゆる『名作』の非主人公から見た話は何であんなに文学的なのは、主人公補正が無い分、心情が追いやすく、ストーリーに意味を持たせられるからかな。そんなこと考えました。最高。

 

③私一人/ローレンバコール
名女優ローレンバコールの自伝。恐ろしい記憶力だな、と思った。伴侶のハンフリーボガードが亡くなるところは史実を知ってるだけに本当につらかった。
仕事をして恋をして、傷ついたり仕事の栄光に酔ったり選択を強いられたり、女優ならではの部分もあるけど一人の女性としての生き方がもの凄い熱量で書かれてる。ハックルベリフィンの冒険もそうだけど、長い。二ヶ月ぐらいかけて読んだけど読んで良かった。そしてバコール美しい。写真集出ねえかな。

 

以上です。

 

でも あれはつばさだったよ

ミサイルだか人工衛星だかが打ち上げられた朝、都内の地下鉄は止まっちゃったりして大騒ぎだったようだ。わたしは影響を受けずに済んだけれど、日本に向けてミサイル(あるいは人工衛星)が放たれて、それが首都圏の交通網に打撃を与えるなんて、規模がでっかい話でわたしはなんだか怪獣映画の一人物になったような気持ちがした。


「低予算で少ない人材で何度もミサイルを打ち上げているなんて、『下町ロケット』みたいじゃない?わたし、なんだか最近応援しちゃうのよね」と、言ったら「そんなことよそで言ったら絶対に炎上するよ」とたしなめられた。
炎上は怖いからあまり大きな声では言わないようにする。

 

「でもミサイルが来たらどうしたらいいの?避難方法、地震や火事や津波とは別物でしょう」
「ミサイルじゃないよ、あくまでも人工衛星
「ねえ、どうしたらいいの?」
「地下鉄とかに行くとか」
「地下鉄だって危ないじゃん。シン・ゴジラ見たでしょ」
「うーーーん」
「政府が出してくれたらいいのにね、ミサイル対処法って本て配布してくれないかしら」
「うーーーん」

 

炎上すれすれのトークを交わしたあと、我々は寝床を探して繁華街に出た。
部屋に入って楽しく過ごし、シャワーを浴びて、眠りについた。起きて、また一回して、シャワーをまた浴びて、バスローブで出てきたら、その人はスマホをいじっていた。
「何かニュースあった?」と聞くと「総理が某国に訪問したらしいよ」とのこと。
特定の数か国を、某国と言い換えるだけできな臭い雰囲気が出て面白い。「ミサイルは?撃ち込まれてない?」と「来てないねえ、幸運なことに人工衛星すら落ちてこない」と。なんだ、つまんない。わたしたちが寝てる間に、日本、終わってたらチョーおもしろいのにね、と置きっぱなしにしていたペットボトルのミネラルウォーターをがぶがぶ飲む。この国でも世界でも、終わるのだとしたらどんな終わり方がいいだろうか。自由に選べるのだとしたら、世界の終わり方コーディネーターを招集して、素晴らしい終わり方をデザインしてもらいたい。

わたしが終わり方を選べるのだとしたら、わたしはラブホテルという場所がたまらなく大好きで、終末にこんなうってつけの場所はないと信じてる。だから、こんなふうに、朝だか夜だか分からない時間に、だるくて重い体を横たえながら、あること無いこと話しているときにふぁーーーーーーーーーんっと終わって欲しい。一番に好きな人と迎えるのは切なくなっちゃうから、3・4番目くらいに好きな人と一緒にいながら。
(一番の人は その頃 微熱が下がらないまま 自室で療養中がいい あなたが熱だとわたしはつまらないしとても自由)

おやすみなさい。

 

 

<でも あれはつばさだったよ まわされた腕にこたえたときの戦慄>田丸まひる

饒舌をときにたしかな証とも

昼過ぎからのデートだったから早起きする必要がなかった。のんびりと起きて、作り置きしていたカレーをブランチとして食べて、食後にはコーヒーを飲んだ。わたしはカレーもコーヒーも大好きで、三食どころか四日間ぐらいこの組み合わせでも構わないぐらいだ。カレーとコーヒーってなんでこんなに合うんだろうとしみじみ感動をし、カレーもコーヒーも、外国から輸入したもので出来てるだろうから、日本が鎖国をしてない現代に感謝をする。江戸時代の人に会ったらまずこれを自慢するだろうなと思う。

お皿も洗って、洗濯物もとりこんで、素晴らしい段取で家を出た。電車で20分先の、大きな駅で待ち合わせをして、楽しいデートのはじまり。喫茶店でおしゃべりをした。

相手が午前中仕事でお昼食べる暇もなかったから軽食メニュー頼んでいいかと聞かれたからもちろんOKを出す。

「あっちゃんはお昼食べてきたの?何食べたの?」
「カレーとコーヒーだよ」
「そっか」

わたしはカレーとコーヒーのマッチングの素晴らしさを語りたくなった。

「あのね」

はだしのゲンがあるでしょう。わたし、あれ大好きなんだけど。ゲンにはお兄ちゃんが二人いて、長男は浩二あんちゃん、二男が昭あんちゃんで、ゲンは三男なんだよ。それでね、浩二あんちゃんは最終的に技術者になって、昭あんちゃんは商人になるのよ。それでね、昭あんちゃんが商人になるために広島を出て商人の都大阪に行くぞっていう決意を兄弟達に話す場面があるのね。そこで、ピカで、あ、ピカってのは原爆のことね、ピカで亡くなったお父ちゃんの言ってた言葉を引用して話すのよ。」

(以下原文ママ
「資源のない日本は世界中の国の人と本当に心からなかよくして貿易で生きるしか道がないんじゃ
武力でよその国の資源を奪いとるとかならず武力でやりかえされ数えきれん多くの人間が戦争で死んでいくんじゃ
戦争はよくばりの自分さえよければええと思うとる死の商人がしかけるんじゃ…」

あつこ「こんな言葉を昭あんちゃんは引用して、自分は平和を売る商人になるんじゃって決意を語って、大阪へ行くのね。まあはだしのゲンのお話はまだ続くんだけどここでとりあえず置いておいて」

「だからカレーとコーヒーがおいしく食べられるってのは平和ってことだし、日本が外国と貿易をして、武器とかじゃなくておいしいものを売買して幸せになれてわたしは嬉しいなって思ったの。これでおしまい。」


ここまで一息で話したら彼から「まさかここでおしまいとは」と驚かれたけど、本当にこれでおしまい。おやすみなさい。

 

<饒舌をときにたしかな証ともわれらは若く恥多く生く>今野寿美

 

君までのきょりわるじかん

わたしが今まで付き合ったりした人たちがそういう人達だったのか、それとも男とはそういうものなのか。比較対象が少ないからいまだに分からず、ただただ「ああそういうものなんだろうなあ」とだけ認識してること。
彼らはなぜ恋人の家に自力のみで行こうとするのだろうか。電車やバスや車ではなく、徒歩や自転車でわたしの住む家に向かわれたことが何度か向かってきた人が何人かいる。

なんとなく気持ちはわかるんだ。対わたしへの愛情の証明やアピール、対自分へのチャレンジ精神やうっとりとした気持ち、愛の確認。


会いたいなと思ったらわたしは「ねえ会いたいんだけどあなたはどうかしら。もしお互いに会いたがってるのなら、二人にとって最も良い方法を模索しませんか」と伝える。
時々は会いたがってもらいたくて、「あなたが来て」「○日の午後なら大丈夫」としか言わないこともあるけど、二人で築いた関係なので、型にはまりすぎず、二人にとって最も良い方法を探して行こうと言葉にして提案するのがわたしのやり方だ。(これがなかなか出来ない人も多いらしい)

会いたくて、愛情を示したくて、自分の力を試してみたくて、わたしは恋人の家に自力だけで行くようなことはしてこなかった。じゃあ、あなたやあなたやあなたのために何をしてきたかと考えると、おいしいケーキ屋さんやおすすめの手土産を教えてあげるとか、マフラーの色を見立てるとか、熱の時に薬飲む前に何食べたらいいかを教えるとか、そういうことばかり。

あの行為は、彼氏あるあるなのだろうか、他の女友達にも聞いてみたいし、真実を知るには彼らに「歴代彼女の家にも自力で行ったことあるの?」と聞かない限り分からない。だから分かりたい。分かり合えるようお互いに歩み寄る努力したい。疑問が生じたら、考えて考えて考えて、提案して、模索して、試してみて、より良い関係になれるようやれるだけのことをやってみる。
してあげたいこととしてみたいことは時々別で、恋やいろんな関係に疑問を打ち付けてくる。最近、わたしはわたしで、自力だけであなたの家に行くとどのくらいかかるのか、気になり始めてしまった。OKGoogle。自宅から彼の家まで、徒歩何分?もう寝よう、おやすみなさい。

 

<君までのきょりわるじかん、それははやさ。光の帯となりゆく列車>中家菜津子

それならばまんまとかかって

君の名は。について今さら考えている。

 

入れ替わりとかの謎現象や「君」じゃなければならない理由が明らかになっていないところが面白かった。

入れ替わりについては「若い頃によくある現象」と言われただけだったし。従来の漫画とかだったら瀧君と三葉は前世で恋仲で将来の約束をしていたとかそういうつながりがあったから、現世で二人は出会い、運命を変えていく~みたいな話が多いのに、あの映画だと、瀧君の相手が三葉なのは唐突で、そんな二人が世界や運命を変えようと奮闘していた。
「入れ替わりってそういうもんよ」「出会いっていうのはそういうもん」という『そういうもん』という説得力の無さが説得力になるというのは、凄いと思う。それ以外の道筋が完璧だったのかもしれない。

 


「やっぱり入れ替わって相手のこと知るうちに、恋に落ちちゃうもんかな」と友人と話した結果「高校生ってのは、そんな感じで人を好きになっちゃうもんでしょ」という結論が出て、ここでも『そういうもん』か、と感じた。

すぐ人を好きになっちゃうわたしにしたら「そういうもん」と言われると、助かるような情けないような気持ちでいっぱいだ。
「あつこが惚れっぽいのはそういうもんでしょ」「別に理由とか無いっしょ、マインドがティーンエイジャーだもんね」みたいな。

恥ずかしながら、年相応に生きてきたつもりではありますが、思春期のボーイズガールズの如くわたしは人を好きになっちゃうので、何も否定は出来ない。

 

 

前に数人でお酒を飲んでて、 わたしが歯の治療をしてる話になった。その時に、同席していた男の人が、歯の治療といえば、と「俺めちゃめちゃ歯並びいいんだよ」と口をイーーッとして歯並びを見せてくれた。歯並びは本当に良かったんだけれどわたしはクラクラした。あ、やばい、好きになっちゃう。

 

また別の場面では、裸眼だった人と二人で食事しながら話していた時「あ、ごめんちょっと」と席を立たれた。戻ってきた人にどうしたのか?と聞くと「コンタクト外してきた」と言われて、とてもキュンと来てしまった。どうしよう、好きになっちゃいそう。

 

わたしはそういった、人の、変な無防備さや考えなしの行動に、弱い。うちのめされる。君の名は。みたいに入れ替わっちゃったら大変だろうなすぐ好きになっちゃうだろうな、と今から心配なほど。そういう人が好きなのは、たぶんわたしの時頭と経歴がとてもお堅いからだろう。ふつうの高校を出て、ふつうの大学に入って、ふつうにお勤めをして。大きな揉め事も、目立った反抗期もなくふつうに成長して。我ながらつまらない人生過ぎて、時々嫌になる。ここいらでいっちょう、男の子と入れ替わりでもして運命を変えて、恋に落ちたいものだ。入れ替わりなんかしなくてもいつでも恋はできるけど。そういうもん?そういうもん。

 

<それならばまんまとかかってしまうのもわたしの仕掛けの戯ればむ罠だ>鈴木英子

 

 

 

燃ゆる夜は二度と来ぬゆえ

鍵を失くしたという連絡が入ったから、部屋の掃除がてら探してみるとベッドサイドにぽつんと落ちていた。ははあ、あの時に落としたんだな、と目星をつけ「あったよ」と伝えた。


「マーベル・コミック的なヒーローの飾りがついているやつでしょう」
「そうそうそれそれ、じゃあ今度会う時に、持ってきてくれないかな」
「うん、このヒーロー、何マン?」


ヒーローの名前を教えてはもらったが、知らない人だった。そもそもわたしはヒーローに詳しくないので、当たり前っちゃああたりまえ。
それって強いの?と聞くと「とても強い」とのこと。


「彼はね、つらい過去を背負っているんだよ」
「なんかそういうの多いね」
「ヒーローの条件だから」
「ふうん」


じゃああなたはヒーローに向いていないね、と思ったけれど、口にするのはやめておいた。

ヒーローの条件が、強くてつらい過去を背負っていることなのだとしたら、ヒロインの条件はなんだろう。一途で、優しいことだろうか。それならわたしもヒロインには向いていない。誰もが自分の人生の主人公、なんてミュージカル映画のコピーみたいなことを言うつもりもないので、ヒロインになれないのならそれもまた受け止めるのみである。

後日、二人で夕食をとる約束をし、鍵を返した。お礼を言われたので「何度こっそりと合鍵を作ろうと思ったことか」と言うと、「あっちゃん、それ、なんか怖いよ」と怯えられた。並んで手を繋いで駅まで歩いた。まだ夜は少し寒いね、桜開花したらしいけど全然見ないよね、そんな話をしながら。

ポケットに入れた鍵の音がちゃらちゃらと聞こえる。わたしの鍵には、小さなクマのマスコットをつけている。駅へ向かう途中、ふいに抱き寄せられた時に、自分の冬物のコートのポケットから、相手の上半身を越して、やらかいクマの感触を感じた。あ、クマつぶれてる。そう思った。

 

<燃ゆる夜は二度と来ぬゆえ幻の戦旗ひそかにたたみゆくべし>道浦母都子